ファクタリングの償還請求権とは?リコース・ノンリコースと倒産時の負担を解説

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ファクタリングの償還請求権とは?リコース・ノンリコースと倒産時の負担を解説

ファクタリングの契約を確認するとき、手数料と並んで重要なのが「償還請求権」です。簡単にいうと、償還請求権の有無は、売掛先から売掛金を回収できなくなったとき、その損失を誰が負担するのかに関係します。

一般的な「ノンリコース」のファクタリングでは、売却した売掛債権について売掛先が倒産するなどして回収不能になった場合、その信用リスクをファクタリング会社側が負担し、売主に返済義務が生じない仕組みが基本です。

一方、売掛先から回収できなかったときに、利用企業が債権を買い戻したり、自社資金からファクタリング会社へ支払ったりする仕組みでは、実質的にリスクが利用企業側に残ります。

金融庁も、ファクタリング会社が償還請求権を持たず、債務者の不払いリスクがファクタリング会社へ移転しているかどうかを、取引の法的性質を判断する重要な事情として示しています。

この記事の要点

最初に要点を整理します。

  • リコース:売掛先が支払わない場合に、利用者側へ買戻しや支払いを求められる仕組み
  • ノンリコース:売掛先の信用リスクを原則としてファクタリング会社が負担する仕組み
  • 売掛先が倒産した場合でも、ノンリコースなら原則として利用者が売掛金そのものを補填する仕組みではない
  • ただし、架空債権、二重譲渡、虚偽説明、契約上の表明保証違反などは、単なる「売掛先の倒産」とは別問題
  • 契約書に「ノンリコース」と書いてあるだけで判断せず、実際に誰が不払いリスクを負担する契約なのかを見ることが重要

ファクタリング会社を選ぶ際は、「手数料○%」だけでなく、回収不能時の負担が誰にあるのかまで確認してください。

償還請求権とは?

ファクタリングにおける償還請求権とは、一般に、譲渡した売掛債権が回収できなかった場合に、ファクタリング会社が売主に対して買戻しや金銭の支払いなどを求める権利を指します。

たとえば、次のケースを考えてみます。

A社が取引先B社に対して500万円の売掛金を持っており、その売掛債権をファクタリング会社へ売却しました。その後、売掛先B社が倒産し、500万円を支払えなくなったとします。

ここで重要になるのが、

「その500万円の回収不能リスクを誰が負担する契約だったのか」

です。

ノンリコース契約で、本当に売掛先の不払いリスクがファクタリング会社へ移転していれば、B社の倒産による損失は原則としてファクタリング会社側が負担します。

逆に、A社に買戻し義務や自己資金による支払い義務がある契約なら、最終的なリスクはA社側に残ることになります。

リコースとノンリコースの違い

リコース(recourse)は「遡及・償還を求めること」、ノンリコース(non-recourse)は「償還請求をしない」という意味で使われます。

ファクタリングでは、おおむね次のように整理できます。

比較項目リコースノンリコース
売掛先の不払いリスク利用者側に残る場合がある原則ファクタリング会社が負担
売掛先が倒産した場合買戻し・支払いを求められる可能性原則、利用者へ償還請求しない
債権売却後の信用リスク十分移転しない可能性ファクタリング会社へ移転
契約確認の重要点買戻義務・支払義務免責範囲・例外条件
貸金業との関係実態によって貸付けと評価される可能性名称だけでなく実態で判断

金融庁は、一般的なファクタリングを、売掛債権等を期日前に買い取る債権の売買(債権譲渡)契約と説明しています。

そのうえで、売掛金を回収できなかった場合に、

  • 売主が債権を買い戻す
  • 売主自身の資金でファクタリング会社へ支払う

といった仕組みになっている取引については、経済的に貸付けと同様の機能を持ち、貸金業に該当する可能性があると注意喚起しています。

つまり、単に契約書のタイトルが「債権譲渡契約」だからファクタリングになるわけではありません。

ノンリコースなら売掛先が倒産しても返済しなくてよい?

真正な売掛債権をノンリコースで売却し、その後に売掛先の信用状況が悪化して倒産した場合は、原則として売掛先の信用リスクをファクタリング会社が負担するのがノンリコースの考え方です。

金融庁が紹介する裁判例でも、

  • ファクタリング会社に償還請求権がない
  • 売主による債権の買戻しを予定していない
  • 債務者の不払いリスクがファクタリング会社へ移転している

といった事情を総合的に考慮し、貸金業法が適用されないと判断された例が紹介されています。

したがって、利用前には、

売掛先が倒産して1円も回収できなかった場合、当社には何円の支払い義務が残りますか?

と確認するのが非常に分かりやすい方法です。回答だけでなく、その内容が契約書のどこに書かれているのかまで確認してください。

「ノンリコース=どんな場合でも利用者に責任がない」ではない

ここは特に重要です。

ノンリコースとは、基本的に売掛先の信用リスクを誰が負担するのかという話です。

そのため、「ノンリコースだから、何が起きても利用者には一切責任がない」という意味ではありません。

例えば、

  • 存在しない売掛債権を申し込んだ
  • 同じ売掛債権を複数の会社へ譲渡した
  • すでに支払済みの債権を売却した
  • 売掛先との重大なトラブルを隠していた
  • 契約上求められた重要事項について虚偽の説明をした

などは、「売掛先が通常の経営悪化によって倒産した」という話とは性質が異なります。

実際の責任範囲は契約内容や個別事情によって変わるため、「ノンリコース」という言葉だけを見ず、契約上の表明保証、買戻し条項、損害賠償条項なども確認する必要があります。

金融庁も、契約上はノンリコースとされていても、売掛先に不払いの兆候がないことなどについて利用者側に広範な表明保証を求めるなど、実質的に債務を保証させているのに近い取引について、貸付けと判断された裁判例を紹介しています。

売掛先が倒産した場合の負担をケース別に整理

ケース1:契約後に売掛先が突然倒産した

真正な売掛債権をノンリコースで譲渡した後、予期できない事情で売掛先が倒産したケースです。

ノンリコース契約で信用リスクがファクタリング会社へ移転していれば、基本的にはファクタリング会社側が回収不能リスクを負担します。

ケース2:リコース契約で売掛先が倒産した

契約上、売掛先が支払わない場合に利用者へ買戻し義務等が設定されている場合は、利用者に負担が戻る可能性があります。

ただし、その取引がファクタリングと呼ばれていても、実質的にファクタリング会社が不払いリスクを負っていない場合には、貸金業に該当する可能性があります。

ケース3:売掛債権自体が存在しなかった

これは売掛先の「信用リスク」とは別問題です。

存在しない債権を譲渡したのであれば、ノンリコースだからファクタリング会社がすべて負担する、とは考えない方がよいでしょう。

契約違反や虚偽説明等の問題になる可能性があるため、契約内容の確認が必要です。

ケース4:同じ売掛債権を二重譲渡した

同一の売掛債権を複数の相手へ譲渡すると、権利関係の重大な問題が生じます。

法務省によれば、債権譲渡では債務者や第三者に対して譲渡を主張するための「対抗要件」が問題となり、法人による金銭債権の譲渡では債権譲渡登記を利用して第三者対抗要件を備える制度も設けられています。

ノンリコースであっても、二重譲渡まで免責されるという意味ではありません。

契約書では「償還請求権」という言葉だけを探さない

契約書を確認するとき、

「償還請求権なし」

という1行だけを見て安心するのは避けた方がよいでしょう。確認したいのは、実際に不払いが発生したときの処理です。

特に次のような表現を確認します。

  • 買戻し
  • 償還
  • 保証
  • 補償
  • 売主の支払義務
  • 売主の責任
  • 表明保証
  • 契約解除
  • 損害賠償
  • 債務者の不払い
  • 債務者の倒産

例えば、

売掛先から入金されなかった場合、売主は当該債権を買い戻す

という内容なら、実質的にどのようなリスクが利用者側へ残るのか確認が必要です。

一方、

売掛先の信用リスクによる不払いについて、売主は償還義務を負わない

という内容なら、ノンリコースの性質がより明確になります。

ただし最終的な法的評価は、契約書の一文ではなく取引全体の実態によって判断されます。金融庁もこの点を明確にしています。

「ノンリコース」と書いてあれば必ず安全なのか?

必ずしもそうとは限りません。

金融庁は、

契約書にノンリコースの規定があるかという形式だけではなく、経済的側面や取引の実態に照らして判断する

と注意喚起しています。

例えば、契約上はノンリコースでも、

  • 実質的に利用企業が必ず買い戻さなければならない
  • 売掛先から回収できなければ利用企業が自社資金で払う
  • ファクタリング会社が売掛先の不払いリスクをほとんど負わない

といった実態なら、「ノンリコース」という名称だけでは判断できません。「売掛先が払わなかったときに、最終的に誰のお金が減るのか」を確認する

ことをおすすめします。

償還請求権と債権譲渡登記は別の問題

償還請求権と債権譲渡登記は混同しやすいですが、別の問題です。

償還請求権は、

回収できなかったときに誰が負担するかという問題です。

一方、債権譲渡登記は、主に債権が譲渡されたことを第三者へ主張するための仕組みです。法務省によれば、法人が金銭債権を譲渡した場合、債権譲渡登記を行うことで、債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えることができます。

したがって、

ノンリコースだから登記不要

あるいは、

登記をしたからノンリコース

という関係ではありません。それぞれ別々に契約内容を確認してください。

関連記事:ファクタリングでの債権譲渡登記・第三者対抗要件の二重譲渡防止とは

ファクタリング契約前に確認したい7項目

償還請求権だけでなく、次の7項目をまとめて確認すると判断しやすくなります。

確認項目確認する内容
償還請求権売掛先が不払いの場合に支払義務があるか
買戻し義務どのような場合に債権を買い戻すのか
信用リスク売掛先倒産時の損失を誰が負担するか
表明保証利用者が何を保証する契約なのか
手数料最終的にいくら差し引かれるか
債権譲渡登記必要か、費用はいくらか
契約解除・損害賠償どのような場合に責任が生じるか

特に重要なのは、

「売掛先が明日倒産した場合、当社はファクタリング会社へいくら支払う必要がありますか?」

と具体的に聞くことです。回答内容と契約書の記載が一致しているかまで確認してください。

ファクタリングを装った貸付けにも注意

一般的な事業者向けファクタリングは、売掛債権の売買です。

しかし金融庁は、ファクタリングの形式を取りながら、実質的には高金利の貸付けを行う事例について繰り返し注意喚起しています。

特に、

  • 債権額に比べて買取代金が著しく低い
  • 売掛先が払わないと必ず買戻しを求められる
  • 自社資金から支払う必要がある
  • 実質的にファクタリング会社が信用リスクを負っていない

といった場合には、契約内容を慎重に確認してください。

消費者庁も、ファクタリングを含む違法な貸付けや悪質な金融業者への注意を呼びかけています。

少しでも契約内容に疑問がある場合は、その場で契約せず、弁護士など法律の専門家へ相談する方法があります。

ファクタリングの償還請求権についてよくある質問

ノンリコースなら売掛先が倒産しても支払わなくてよいですか?

真正な売掛債権をノンリコースで譲渡し、売掛先の信用リスクがファクタリング会社へ移転している契約であれば、売掛先の倒産による回収不能について、原則として売主へ償還を求めない仕組みです。

ただし、契約違反、虚偽説明、架空債権、二重譲渡などは別の問題です。

リコース型ファクタリングは違法ですか?

「リコース」という言葉だけで一律に違法と判断することはできません。

ただし、売掛先が支払わなかった場合のリスクをファクタリング会社がほとんど負わず、売主に買戻しや自己資金での支払いを求めるなど、実態が貸付けと同様であれば貸金業に該当する可能性があります。

契約書に「ノンリコース」と書いてあれば問題ありませんか?

名称だけでは判断できません。金融庁も、契約書上のノンリコース条項だけでなく、経済的側面や実際の取引内容から判断するとしています。

売掛先が支払わなかったらすぐ倒産扱いになりますか?

なりません。

支払遅延、請求内容への争い、事務処理上の遅れ、資金難、法的倒産など、不払いの原因はさまざまです。どのケースまでファクタリング会社が負担し、どのケースで利用者に責任が生じるのかは契約内容を確認する必要があります。

2社間ファクタリングでもノンリコースですか?

2社間・3社間は契約に関与する当事者や回収方法に関する分類であり、リコース・ノンリコースとは別の分類です。

2社間だから自動的にノンリコースになるわけではありません。

【まとめ】「売掛先が払わなかったとき誰が負担するか」を確認する

ファクタリングの償還請求権を理解するうえで、最も重要なのは言葉を覚えることではありません。

確認すべきなのは、売掛先から売掛金を回収できなかった場合、最終的に誰がその損失を負担するのかです。

ノンリコース型で信用リスクが適切にファクタリング会社へ移転していれば、売掛先の倒産などによる不払いリスクは原則としてファクタリング会社側が負担します。

一方、利用者に買戻し義務や自己資金による支払い義務がある場合には、実質的なリスクが利用者側に残っている可能性があります。

さらに重要なのは、ノンリコースという名称だけでは判断しないことです。契約前には、償還請求権 → 買戻し義務 → 表明保証 → 不払い時の処理 → 実際の負担者まで確認してください。

ファクタリング会社を比較するときも、手数料や入金スピードだけではなく、売掛先倒産時のリスク負担まで含めて契約条件を比較することが重要です。

主な参考情報

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